貞松浜田バレエ団「The Lake」森 優貴氏振付の鑑賞

3月17日(日)舞台鑑賞に行って参りました。


貞松浜田バレエ団「The Lake」世界初演
2024年3月16日、17日

少し早めに会場に着くと既にこの作品の振付家である森 優貴氏のプレトークが始まっていました。
とてもおしゃべりがお好きな方のようで、このまま2時間しゃべっていられると、笑いながら話されていたのが印象的でした。

白鳥は出てこない「白鳥の湖」
だから、「The Lake」と命名されたそうです。
2012年から2019年までドイツで欧州日本人初の芸術監督として活躍されていた森氏。
帰国後、日本国内で活躍されながらも、社会状況、世情が一変したここ数年は、人々の心が分断されたことを感じておられたとのこと。それが、この作品を生んだそうです。
パンフレットに、メッセージが寄せられていたので、ここに掲載させていただきます。



脚本、構成、演出、振付、ダンサー、衣裳、照明、映像、舞台セット(床の色も)、音響、すべてが、伝えたい思いに集中していました。

音楽は、P.チャイコフスキーの「白鳥の湖」の曲だけでなく、他の曲(Abel Korzeniowski,Philip Glass,Dustin O’Halloran,Ezio Bosso)も使用されていました。「白鳥の湖」の曲のドラマチックさをより引き立てているような感じがしました。

2幕構成のThe Lake、最後までぐいぐいと引っ張られるように拝見しました。
特に、1幕で印象的だったのが、悲しみに暮れる人々が集まる重い空気の部屋の中に、亡くなった娘役の速水飛鳥さんが突然部屋に現れて、キュートに、エネルギッシュに、若々しく、嬉々として、浮いているように、軽やかに、狂ったように踊るシーンは、舞台空間の空気の重さのコントラストをも生み、怖いくらいでした。
2幕では、人々が魂たちと踊る喜びを、光と白で表し、見終わった時には癒された気持ちになりました。
終演を迎え鳴りやまない拍手の中のダンサーの皆さんの姿に目頭が熱くなりました。
(16日が初演で、17日が2日目の舞台、この日の午前中も練習されていたそうです・・・!)





家族、人間関係、愛、死、それに伴う逃れられない悲しみ、・・・人間のカルマとでもいうものかもしれません。
湖の魂たちは、生、死、関係なく、光り、きっと永遠のものなのでしょう。
今を生きる人と、亡くなった人は遠いけれど近い。見えないけれど居る。
映像に映し出された円、その歪み、がさつき、そして、また円。
森氏からの、いや森氏を通じて天から降ろされた宇宙のメッセージのように感じました。

宇宙



(上の画像は、作品ストーリーです。私は、帰宅してから拝読しました。)



HANA DESIGN ROOM 鷲尾華子さん制作の衣裳がとても素敵で、作品を引き立てていました。

1幕の登場人物の悲しみの中で着用された洋服もさることながら、湖の魂の衣裳は、背中が腰までぱっくり開いたフィットしたトップスとサリエルパンツのとの組み合わせ。(この作品にチュチュは一切出てきません。)
前から見ると白い布の透け感と重なり合った白の陰影、ダンサーが後ろを向くと肩甲骨と背骨の動きがはっきり見え、それはそれは美しかったです。
しかも、一着一着全部違う衣裳!オートクチュールです。
目が釘付けになりました。

1幕のセットも素敵でした。映画のよう。
窓、壁付けのライト、コーナーの位置、比率、配置、色使い!
それらが、衣裳と照明とマッチしていました。



皆様、すてきな舞台をありがとうございました!

会場入り口では、お元気な貞松正一郎先生ともお会い出来ましたよ。