今年の公演の脚本が出来上がりました。
皆様、どうぞお楽しみください・・・・。
「くるみ割り人形と、ドロシーばあさん」 脚本 Seri
今日は12月25日、クリスマスです。ドイツという国の北のはずれの片田舎での出来事です。
だんだん辺りはすっかり暗くなって来て、雪が降ってきました。子供達が、シュタールバウム家の方に向かって急いでいます。そこへ、この辺りではあまり見かけない感じの、ちょっと風変わりな、おばあさんが、古ぼけた地図を片手に現れました。
幕開き
シュタールバウム家では、お母さんがクリスマスパーティの飾り付けをしています。その家の二人の子供達、心優しい妹のクララと、やんちゃな兄のフリッツは、早くパーティが始まらないかと待ち切れない様子です。
さあ、ようやく、たくさんのお友達がシュタールバウム家に集まってきました。クララもフリッツも嬉しそうです。
そこへ、先ほどのちょっと風変わりな、おばあさんが、訪ねてきました。実は、そのおばあさんは、シュタールバウム家の遠い遠い親戚で、外国に住んでいる、ドロシーという名前の魔法使いだったのです。
子供達は、ドロシーが、何か、隠しているのをみつけ、それを見せて、とねだりました。ドロシーは、もったいぶりながらも、持っているものを、高々と自慢げに見せました。それは、醜い顔のくるみ割り人形でした。子供達は、気持ち悪がり、ぷいっとそっぽを向き、、お母さんの方へ行ってしまいました。
ただ一人クララだけは、くるみ割り人形を気に入り、ドロシーに、それを私にください。とお願いしました。ドロシーは、たいそう喜んで、何やら、もぐもぐとなにかを唱えて、指をくるくる回してから、クララに、プレゼントしました。
クララは、人形をギュッと抱きしめ、挨拶するようにゆっくりキスをしました。
すると、どうでしょう。
今まで賑やかだったパーティは静まり返り、誰ひとりとして動きません。ドロシーとクララ以外は。クララはとても不思議な気持ちになり、じっと、くるみ割り人形を見つめました。どのくらい経ったでしょうか、ドロシーがもぐもぐなにかを唱え、指をくるくる回すと、みんな、何事もなかったように動きだしました。
楽しい音楽が次から次へと流れます。
子供達は、ますます、楽しく踊ったり、おしゃべりしたり、酔っ払った大人たちをからかったりして、楽しい時間を過ごしていました。
しばらくして、魔法使いのような格好に変装したドロシーが現れました。みんなは、それが誰だか分からず、ちょっと怖くて後ずさりし、遠巻きに眺めました。
彼女は杖を取り出し、それを振りました。あれ?不思議なことが次々起こります。まるで手品師のようだと、みんなは大喜び。でも、疑り深いフリッツは、そんなの、インチキに決まっているとおばあさんに詰め寄ります。
おばあさんは、フリッツに向かって杖を振りました。すると、あらあら、不思議・・・!
フリッツは、みんなに大笑いされます。恥をかかされたフリッツは顔を真っ赤にして怒りました。
おばあさんは、変装の衣装を脱ぎました。彼女がドロシーだとわかると、子供達はもっと手品を見せてと、せがみました。
ドロシーはクララのくるみ割り人形や、他の人形に向かって、杖を振りました。
すると、まるで生きているように人形が踊りだしました。
まずは、コロンビーヌという女の子のお人形、ピエロのハレーキン人形、最後にくるみ割り人形が大きくなって踊りました。
子供達はとても驚き、そして人形の踊りを楽しみました。
でも、みんなの前で、恥をかかされたフリッツは面白くありません。友達の男の子達をそそのかして、人形を壊します。
クララは、人形が壊されて大泣きしてしまいます。
お母さんや、ドロシーが慰めますが、止まりません。
お友達もたくさん来ているし、楽しいパーティなのだから、泣くのをやめないといけないと、わかっているのですが、次から次へと涙が出てくるのでした。
お母さんは、もう夜も遅いから、パーティをお開きにしましょうと、みんなに言いました。
子供達は、クララを気遣いながら、それぞれのおうちへ帰って行きました。
お母さんは、クララに早く寝室へ行くように言いますが、もう少し、と、居間に残りました。
クララは、壊れた人形たちを抱いて、泣き疲れたのか眠ってしまいました。
そこへ、まだ、みんなの前で恥をかかされたことに腹を立てているフリッツが、そろりそろりと、やってきて、人形たちを隠してしまいました。
やがて、真夜中を知らせる12時の鐘が鳴り出しました。
最後の鐘の音が終わりを告げると、隠してあったお人形のコロンビーヌとハレーキンが大きくなって動き出しました。壊れているので、少し動きにくそうです。コロンビーヌとハレーキンは、フリッツを懲らしめようと追いかけます。フリッツは怖くなって、逃げ回ります。
眠っていたクララは、辺りの様子が変なことに気がつきます。クリスマスツリーのところに、隠してあったくるみ割り人形を見つけ抱きしめました。
すると、どこからかドロシーが現れて、くるみ割り人形が動き出しました。
フリッツは、お人形を粗末にしたことを心から謝りました。クララも一緒に謝りました。
すると、壊れていた人形達はすっかり治り、元気になりました。
くるみ割人形は、クララと一緒に踊りました。
くるみ割り人形は、クララとフリッツを夢の国へ招待しました。コロンビーヌとハレーキンは嬉しそうに踊ります。天使たちが現れて、夢の国へ導きました。
間奏
クララとフリッツは人形たちの道案内で夢の国へたどり着きます。
そこは、楽しく、美しい音楽が流れ、花の精たちで溢れていました。
美しいこんぺいとうのお姫様が、花の精たちと一緒に、クララとフリッツを歓迎しました。
スペインの曲が流れ始めると、コロンビーヌは、クララとフリッツを、ダンスに誘いました。
くるみ割り人形は、ロシア人形と一緒に迫力ある踊りを披露し、フリッツはハレーキンと中国の踊りを軽快に踊ります。花の精たちも嬉しそうです。
クララは、くるみ割り人形と一緒に葦笛の音楽に合わせて仲良く踊りました。
最後にこんぺいとうのお姫様が踊り、みんなは喜びに溢れました。
気がつくと、クララとフリッツは居間で寝ていました。
人形たちに囲まれて。
二人は仲良く天を見上げるのでした。
おしまい。
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