「銀河への旅」解説

昨年の発表会で上演させて頂いた創作バレエ作品「銀河への旅」について、質問を受けることがあります。

「作者の意図が知りたい、答え合わせしてほしいです。」

「最後のシーンで、男は羽を床に置きましたが、あれはどういう意味ですか?」

「白鳥に会えなかったのですか?」

「あの作品はどういう意味ですか?」と。

昨日、たまたま小学生のIちゃんから、質問を受けたので、この機会にしたためておこうと、このブログを書いています。

あの作品は、2021年の春に作り始めました。

背景として、コロナ渦で人々の心が暗くなっていたことや、

人類の火星移住などが話題になっていた時期だったことが根底にあり、発想に少し関係したかもしれません。

「銀河鉄道999」、「火の鳥」、「星の王子様」、「青い鳥」の物語や、マルク・シャガールの絵、フェルデンクライスメソッドからニューロン、アストロジー(占星学)的考え方からも、この作品は大きな影響を受けています。

<ストーリーのご紹介>

炭鉱の町の夜、薄汚れたの男たちが、疲れた様子で背中を丸め、座り込んでいます。

その中の1人の男が、光るきれいな羽を見つけます。なぜだか惹かれるものがあり、その羽の持ち主を探したい衝動に駆られて走り出しました。。

しばらくすると白い鳥が幻影のように現れました。しかし、追いかけると、すっとどこかに消えていきました。男は夢中になって後を追います。

男たちは銀河へ行く列車に乗り込みます。男も羽を握って乗車します。 やがて、列車は地球を離れます。

初めに着いた星は<眠い住人の住む星>です。そこにいる住民は、生まれてから死ぬまで、ただずっと眠い人として生きています。

宇宙の階段がありました。 そこをずっと降りていくと、<底のない水の星>に着きました。そこの住人はただ水の中に居て、そこから出ようともしません。

男はいろいろな星を見て、知らないうちになにか影響を受けていました。それは体の内側からの変化、”しゃっくり”の形で現れます。男は自分の変化に驚き戸惑います。

次に訪れたのは、<果てしなく深い森の星>です。森は静かでカッコーの鳴く声が響いています。森は、永遠にそのままです。

その次は、<黄色い鳥の星>です。黄色い鳥しかいません。他の色の鳥はいない、それが当たり前。鳥たちは元気にただ羽ばたいています。

その次は、<バレリーナの星>です。この星に生まれた人は、死ぬまで、ただバレエの練習を続けます。タンジュをし続けます。それがその星では自然なのです。

その次は、<働き者の星>に行きました。住人たちはずっと畑を耕しています。楽しそうに鍬を振り続けます。それが当たり前なのです。 男は、「この羽の持ち主を知らないか。」と働き者たちに尋ねます。 働き者は、「あっち」と指差して教えてくれました。

そこでは、白鳥が静かに踊っています。

男は悟りました。 世界(宇宙)は全ては完璧で、且つ調和している。 私もその一部なのだ。 外に何かを求めなくてもいいのだ。 それでいいのだ。自分のすべきことを、ただひたすらにすることでいいのだ。 迷いや不満は消え、男は宇宙の中の一員として生きていることを感じました。 男は、握っていた羽を置きました。

STクラスのKちゃんが描いてくれたプログラムの表紙

「銀河への旅」

曲:サン=サーンス 動物の謝肉祭

制作・初演:2021年